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会長会見・挨拶

髙島会長 就任記者会見

2022 年 6 月
大阪銀行協会


大阪銀行協会 髙島会長就任記者会見

日 時 : 2022年6 月13日(月)13:00~13:30
場 所 : 大阪銀行協会  別館 7 階特別会議室

≪会長より冒頭挨拶≫
 只今ご紹介にあずかりました、三井住友銀行の髙島でございます。この度、大阪銀行協会会長を仰せつかりました。これから一年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は、就任の会見ということでございますので、足元の経済情勢についての所感、あるいは大阪銀行協会の活動をご紹介し、会長就任の挨拶とさせて頂きたいと存じます。
 さて、足元の世界経済を見てみますと、全般的には、オミクロン株の感染拡大の落ち着きに伴います社会経済活動の再開の動きを背景に、回復基調を維持しております。今後も世界経済は緩やかな成長を持続すると見ておりますが、ロシア・ウクライナ戦争によります資源、食糧などの価格高騰や、中国のゼロコロナ政策によりますサプライチェーンの混乱、あるいはそれらに伴います世界的なインフレの昂進と海外各国の利上げの動きが景気の下押し圧力となる可能性に注意が必要だと思われます。
 わが国経済につきましても、まん延防止等重点措置の解除によりまして、サービス消費や製造業の生産が回復するなど、緩やかな回復局面にあります。
 もっとも、先行きにつきましては、原材料価格の高騰によります電気料金や各種商品の値上がりが消費の下押し圧力になるほか、日米の金利差と金融政策の方向性の違いに起因して急速に進んだ円安の影響など、不透明感を払拭できない状況にあります。
 こうしたなか、今後の大阪・関西に目を向けますと、大きなチャンスが控えております。
 その一番の目玉は、申すまでもなく、2025 年に開催される大阪・関西万博でありまして、万博は 2 兆円ともいわれる経済効果により関西経済の底上げに繋がるほか、中長期的にも万博の場を未来社会の実験環境として、多様な主体が新たな産業やビジネスの種を共に作り育てるという意味の「共創」をすることによりまして、関西、ひいてはわが国経済の起爆剤となることが期待されております。
 万博のほかにも、大阪・関西には「うめきた 2 期」開発や IR など、チャンスが目白押しとなっております。
さらに、今月 10 日に再開されました海外からのインバウンド受入れが本格化していきますと、幅広い業種、企業へ好影響をもたらし、関西の賑わいを取り戻すことにも繋がります。
 このような環境の下、私ども金融界としましては、質の高い金融サービスを提供することにより、大阪・関西を金融面からしっかりとサポートし、個人や企業の抱える課題を解決するとともに、関西経済の発展に貢献してまいりたいと考えております。
 さて、皆さまもご承知の通り、大阪銀行協会の主たる機能の一つであります手形交換業務は、その機能を全国銀行協会が運営をする電子交換所に移行することに伴いまして、本年 11 月をもって終了いたします。今後は、「関係官庁や産業界、金融機関との連携」や「金融経済の調査・研究、普及・啓蒙」、そして「銀行とりひき相談所における業務」などを通じまして、引き続き地域金融の円滑な運営、顧客サービスの向上を図ると同時に、広く一般の方々に銀行業務に対するご理解を深めて頂くべく取り組んでまいりたいと思います。
 例えば、銀行とりひき相談所では、昨年度も約 850 件の相談や照会にお答えするなど、利用者の皆さまに銀行の業務や制度、そして、金融商品の仕組みなどをご理解頂き、安心して銀行とお取り引き頂ける環境づくりに努めてまいりました。引き続き、地域社会と銀行界の接点として、顧客サービスの向上に資する活動を行ってまいりたいと思っております。
 加えて、振り込め詐欺といった金融犯罪からの利用者保護や、反社会的勢力との関係遮断につきましては、大阪府警等との連携をさらに強化しつつ、引き続き社員銀行との協働に努めてまいります。
 最後になりますが、関西金融記者倶楽部の皆さま方には、今後ともよろしくご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、私の就任の挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。

以 上

≪質疑応答≫
(問)
 幹事社質問として 2 点ほど。先ほどのお話のなかでもあった、まず 1 点は関西経済の現状と今後の見通しということで、プラスの材料、マイナスの材料、原材料のお話、ロシアなどのお話、一方で、円安は輸出企業の多い関西にとってはプラスになるというような言い方をされている方もいるが、その辺を踏まえて関西経済への今後の見通し等について伺いたい。
 あとは、大銀協として企業の資金繰りに対する見通しと支援ということで、ゼロゼロ融資の返済が本格化するなかで、今後の支援方針などについて伺えればと思う。

(答)
 まず最初の関西経済全般についての見方という質問だが、冒頭の挨拶でも申し上げた通り、関西経済は企業の設備投資が底堅く推移しているほか、コロナ禍に伴う消費、雇用、所得環境への影響が和らぐなかにおいて、総じて持ち直しの基調にあると言ってよいと考えている。例えば、関西の輸出について見てみると、EU や中国、アジア向けが増勢を維持しており、2022 年 1 月~3 月期の輸出額は前期比プラス 3%と増加基調で推移をしている。ただし、足元の円安傾向がこの輸出額を押し上げていく方向にあることには留意が必要かと思う。
 次に生産について見てみると、電子部品、デバイスの回復が持ち直しの動きを牽引する一方で、中国のロックダウンによる部品供給の停滞等に伴い、輸出機械関連を中心に広範な業種で影響が出ているという面もある。
 個人消費については、まん延防止等重点措置の解除により、飲食や宿泊、百貨店などで客足の回復が見られているところである。
 今後を展望してみると、地政学的な影響を背景とする賃金の回復を上回る資源高、輸入物価の上昇が、個人消費や企業活動、あるいは投資姿勢に与える影響には注意が必要であるわけだが、同時に、経済活動の正常化に伴うサービス消費の回復や雇用情勢の改善が景気の押し上げに寄与していくと見ている。
 また、6 月 10 日には、外国人観光客の受入れが再開されたわけだが、さらに、今後インバウンドの受け入れが進み、人の往来、交流が活発になれば、幅広い業種、企業に好影響をもたらし、関西のにぎわいを取り戻すことにもつながると見ている。
 質問のなかに、円安のインパクトについても入っていたと思うので、若干申し上げると、円安がもたらす影響は、まさにご指摘の通り両面あるわけであり、企業においても内需型企業か輸出型企業か、さらには海外生産比率などによっても異なるということであるので、一概に申し上げにくい。ただし、コストや収益など、先行きの見通しを立てるうえでは、為替レートが安定的に推移することが望ましいことは言うまでもないことだと思う。
 資源価格や原材料価格については、経済活動再開の動きに伴う需要拡大に加え、ロシア・ウクライナ情勢の悪化がいわば価格の騰勢に拍手をかけている。資源を輸入に頼るわが国にとって、資源価格の高騰はいってみれば急所であり、足元の円安傾向も相まって、コストプッシュ型のインフレは非常に厄介な問題ということかと思う。
 仮に資源価格の上昇に伴う輸入原材料コストの増加について価格転嫁が進まない場合、企業収益が大きく押し下げられる可能性がある。この影響は特に製造業で大きく、設備投資などの前向きな経済活動にも支障が生ずるリスクにも注意が必要である。実際、関西の製造業、非製造業ともに、仕入れ価格と販売価格の乖離幅が拡大をしており、全体としてみれば企業はコスト増を十分に価格転嫁できていないのであろうと見ている。
 逆に、価格転嫁が進んだ場合には、消費者マインドが悪化、あるいは個人消費にネガティブな影響を与える可能性がある。特に、ガソリンや電気代などは比較的早い段階で消費者物価に転嫁され、家計の購買力を低下させる可能性が高いのではなかろうかと危惧をする。
 足元の為替相場の動向、あるいは資源価格の動向等が関西経済に与える影響については引き続き注意深く、しっかりと見ていく必要があろうかと思っている。
 2 つ目の質問は、企業の倒産とかゼロゼロ融資の返済が始まるなかで、今後の資金繰り等についての見通しということであったと思う。
 東京商工リサーチによると、ご承知の通り、関西の企業倒産件数は、財政・金融両面の支援もあって 2021 年度、昨年度は 1558 件と前年度比 19%減の低水準となったわけである。しかしながら、先週公表された 2022 年 5 月の倒産件数を見てみると、前年度同月比でプラス 3.4%ということで、単月について見ると 3 カ月ぶりに前年同月を上回ったということになっている。
 特に、新型コロナウイルス感染症の長期化による事業者への影響には引き続き注視が必要と考えている。加えて、足元では、まさに先程から申し上げている通り、ロシア・ウクライナ情勢の悪化を背景としたエネルギー、原材料価格の高騰などにより、多くの事業者への影響も懸念をされている。先行き不透明感は引き続き強い状況かと思う。
 また、ゼロゼロ融資の返済が始まる企業が今後一段と増えてくる見込みであることから、個社ごとに資金繰りの状況をよく見つつ、支援には万全を期していく必要があると思っている。今後も事業者の状況を積極的に把握して、返済猶予や条件変更も含む資金繰り相談に丁寧かつ適切に対応するなど、事業者のニーズに応じたきめ細かな支援を徹底していく方針である。

(問)
 不動産売却の方針に関連して伺う。髙島会長は全銀協の会長でもあるが、東京の大手町にある全銀協のビルもかなり老朽化して、自己で所有したまま仮移転をして建て替えて、たしか昨年、また戻ってくるという対応をされたかと思う。今回の大銀協のビルは売却とする、この方針を決定した理由についてお伺いできればと思う。
 また、差し障りなければ、売却先について、また、売却した後再開発すると思うが、それについて何か方向性等が決まっているものがあれば教えていただければと思う。

(答)
 まさに先ほどアナウンスさせていただいた通り、本協会の所有不動産を売却する方針を決定した。今般、このような方針を決定したのは、現在、当協会の建物のなかで行っている手形交換業務が、本年 11 月予定の電子交換所の決済開始に伴って業務を終了する予定であるということが一番大きな理由になる。これは先ほど説明した通りである。
 その後は、手形交換に利用していたスペースが遊休化することになるのと、現在の建物自身が建築後 50 年を超えており、ある種老朽化が進んでいるということ、これはご指摘の通りであるが、それを加えたうえで、方針を決定したということである。
 今後は、事務所の移転先の選定を進めるとともに、所有不動産の売却に向けて必要な対策を講じていくということを、まさに本日、総会・理事会でも議論した。各種のアドバイザーを雇い、幾つかのオプションを検討してきた。その結果、当協会が置かれている、あるいは今後の業務の内容等を考えたうえで、やはり売却というのが、この跡地の利用という面でもより付加価値の高いものにつながっていくのではなかろうかということで、総合的判断をして決定したということである。
 冒頭、全銀協の東京銀行協会のビルについて説明があったが、まさに昨年末から入っている。新しい、建て直したスペースを利用しているということだが、これは、全銀協と大銀協が、役割や業務範囲において違っているので、一概に全銀協で取った方式がベストということではないと思っている。
 ちなみに、全銀協の会長は、私は今月いっぱいで退任することになっているので、ご参考までに申し上げておく。

(問)
 もう 1 点、手形交換所の件に関連して、今年 11 月の交換業務の終了のほかにも、企業の取引とか決済の業務をめぐっては、2026 年までに手形自体の完全な電子化という方向性が示されている。また、それ以外にも、今年の 1 月に改正電子帳簿保存法が施行され、来年の 10 月には電子インボイスも開始される見通しとなっている。このように企業の電子化の動きが様々な分野で進んでいるわけだが、それに対応することを後押しする役割が金融機関には求められているかと思うが、それについて会長のお考えを聞かせていただきたい。

(答)
 まさにご指摘の通りであり、私からお答えすべきことをすべて今、質問のなかで触れて頂いた。かつ、このプロセスに当たっては、銀行界、金融界が主体的、自律的にしっかりと取り組んでいかなければならないという認識であるのも、まさにご指摘の通りだと思っている。
 翻って見てみると、例えば手形交換等に関連したでんさいの仕組みができたり、歴史的にはそれなりにステップを踏みつつ進めてきたわけであるが、やはりその後出てきている様々な状況の変化、技術の進歩、あるいは銀行以外の方々が様々な形で決済のサービスに進出される動きも出てきている。そういうなかにおいて、よりスピーディーに進めていかなければならないと考えているところであり、幸いにも、コロナを契機にして政府もデジタル化の遅れに関して非常に大きな問題意識を持って取り組んでいこうということになっているので、ご指摘の通り 2026 年までに手形自体も廃止というか、そういうことも政治日程として承認を頂いたり、今までは中小企業に不利益があるのではないかとか、色々な議論があったわけだが、方向としては、政府もその方向でしっかりと支援をしていこうということにして頂いているので、まさにこの機を捉え
て、一段とスピーディーに進めていく必要があると考えている。

(問)
 先ほども説明いただいたところではあるが、本日、円相場が一時 135 円台となった。約 20 年ぶりの円安水準となったわけだが、改めてこの水準について率直にどのように受け止めているか、お話しいただければと思う。

(答)
 円安の影響については先ほどお答えをしたので繰り返さない。かつ、為替というか、円安の水準自体をどう思うかは、なかなか難しい質問であり、色々な見方があるということがお答えなのかと思うわけだが、この数カ月、特にこの数週間の変動は非常に大きく、急激な相場変動については望ましいものではないのではなかろうかと捉えている。
 まさに先週、政府も財務省、金融庁、そして日銀の幹部が集まって、今の円安の急激な進行についての懸念を共有しておられるということもそれを裏付けているのではなかろうかと思う。

(問)
 1 点伺いたい。もうすぐ参議院選挙が始まる。いろいろ家計、企業を含めて経済への影響が激しいなかで、経済政策に対しての有権者の見方というか、期待も大きいと思うが、どの政党がという意味ではなく、路線としてどんな視点で論戦が進めばよいのか。金融政策、財政健全化などの論点もあるかと思うが、会長ご自身はどのような論戦を期待されているか。

(答)
 本日は大阪銀行協会会長の会見ということであるので、来月の参議院選挙に関して何かコメントするというのは適当ではないということで、控えさせて頂きたい。おっしゃる通り、今年は足元、特にいろんな不透明感が高い経済情勢になっているので、ぜひとも実のある政策論議がこの選挙を通じて行われることをまずは期待をしたいと思う。
 特に、一つの機軸になると思われるのが、先週まさにいわゆる骨太の方針、新しい資本主義の実行計画が閣議決定され、発表された。4 つの切り口で、政策パッケージとして現政権の方針を取りまとめられたということであるので、やはりその各論点について実のある議論が行われることを期待する。特に、貯蓄から投資、あるいは人的資本への投資という視点は、われわれ銀行界としても非常に重要なテーマだと思っている。かつ、非常に広範に好影響が期待できるアジェンダであろうと思っているので、ぜひその辺の、実効性のある議論が進むことを特に期待をしたいと思っている。

(問)
 大阪の国際金融都市構想について伺う。大阪府や大阪市は、外国企業の誘致等に向けて動きを始めているが、東京とか福岡とどう差別化するかということについて会長のご意見をお願いしたい。

(答)
 大阪府・市、そして経済機関、金融機関、教育機関、その他多くのプレーヤーが一体となり、大阪・関西における金融機能の強化に向けた取組を進めるということは、国土の均衡な発展を通じた分散型社会を実現するということにも資するものであり、大阪・関西のみならず、わが国全体の成長につながる観点から、まずは大変意義深い取組であろうと考えている。
 今年の 3 月には、アジア・世界の活力を呼び込み、金融をテコに発展するグローバル都市、先駆けた取組で世界に挑戦する金融のフロントランナー都市という大阪における 2 つの都市像、コンセプトを前提とした具体的な戦略が取りまとめられたということであり、そのうえで 2025 年度までの期間を国際金融都市実現の土台づくりの期間と位置づけて、2023 年度から新たな体制を構築すべく今年度前半には方向性を決定し、行政、経済界、民間企業等が連携しながら準備を整えていくということが打ち出されたわけである。
 もっとも、まだまだ抽象的で、引き続き具体的な検討が必要な項目があるのも事実かと思う。従って、今後は今回策定された戦略をもとに、いかに具体的な施策を策定できるか、かつ実効性のある活動を展開できるかということが問われることになると思っている。
 かつ、やはりこの国際金融都市を目指していくということによって、当地におられる企業、団体、あるいは個人、地域住民の方々が、具体的にどんなメリットがあるかを分かりやすく訴えていくことも同時に非常に重要だと思っている。その文脈では、われわれ銀行界もしっかりと意見を申し上げていくことに取り組んでいきたいと思っている。
 東京、福岡と比べてどうなのかというポイントが質問のなかにあったが、是非、特色のある国際金融のセンターが、それぞれに出来上がってきて、日本として国際金融の世界で存在感を作っていくという方向になるとよいのではなかろうかと思っている。

以 上