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会長会見・挨拶

半沢会長 記者会見(関西金融記者倶楽部との懇談会)

2022 年 3 月
大阪銀行協会

半沢会長 記者会見
(関西金融記者倶楽部との懇談会)

日 時 :2022年3月4 日(金) 11:30~12:00
場 所 :大阪銀行協会 別館 7 階特別会議室

≪会長より冒頭挨拶≫
 大阪銀行協会の半沢でございます。
皆様には日頃より当協会の活動にご理解・ご支援を賜り、誠にありがとうございます。大阪銀行協会の会長としての任期も残すところ約 3 ヵ月となりましたので、本日、皆様との懇談の場を持たせて頂きました。最初に私から、足元の経済・金融情勢や当協会の活動についてお話をさせて頂きます。その後に皆様よりご質問を頂戴できればと存じます。
 まず、経済・金融情勢です。
 日本経済は、オミクロン株の感染拡大が続くなか、まん延防止等重点措置などを受け、足元、景気回復が一時的に停滞しております。先行きについては、ワクチン接種や治療薬の普及が進んでくれば徐々に回復基調を取り戻すとみております。
 しかし、ここにきて、大きな不透明感を世界にもたらしているのが一連のウクライナ危機です。安全保障上、深刻な事態が進行していることを非常に憂慮しており、一刻も早い収拾が望まれます。
 内外経済への影響としても、今後の展開次第では資源価格の高騰が長期化し、サプライチェーンや金融システムへの影響も懸念されます。世界的なインフレ圧力の更なる上昇を通じ、各国の金融政策に与える影響にも留意すべ
きと思います。いずれにしても強い警戒感を持って注視していく必要があると考えています。
 続いて、金融情勢です。
 足元、危機対応として導入された支援措置が段階的に縮小しています。日本銀行による新型コロナ特別対応支援オペのうち、大企業が主な対象となるCP・社債等の買入れ増額措置が今月末で終了します。一方、中小企業を主な
対象とした施策の多くは、本年 9 月までの延長が決定されています。また、大規模金融緩和の大枠は維持されており、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」ともされています。
 こうしたなか、私ども銀行界としましては、お客様の資金繰り支援を引き続き最優先で取り組むべき課題と位置づけ、確りと対応して参ります。同時に、コロナ禍からの脱却を図りつつ、新たな挑戦に取り組まれるお客さまへ
のサポートも積極的に進めて参ります。
 そして、地域社会のご期待に沿うためにも、私ども自身が新規事業の創出や DX の動きを加速させるなど、よりよいサービスのご提供に向けた取り組みを加速させて参ります。
 続きまして、今年度、大阪銀行協会として注力してきた活動についてご説明を申し上げます。
 まずは、地域の重要な決済インフラである手形交換所の運営機関としての対応です。安定した業務継続はもちろん、コロナ禍における参加者の安全確保を図るべく、基本的な感染対策の徹底と作業スペースの分散などを実施し
て参りました。
 次に、地域に寄り添うオープンな協会を目指して、地元当局との一層の連携強化に努めました。具体的には、新型コロナの感染防止などに関する大阪府からの諸要請について、府内の金融機関に周知を図りました。また、大阪
国税局の要請を受け、確定申告会場での密を回避する一環として、「国税のキャッシュレス納付」の啓蒙活動を行いました。この施策は、「非接触」「行政の DX」などの観点から、コロナ禍で一段と重要性を増した政策課題でも
あり、積極的な官民連携に取り組んでおります。加えて、特殊詐欺などの金融犯罪の防止に向け、警察当局との連携を緊密に実施致しました。昨年 1 年間の、府内における還付金詐欺の被害件数が前年比 3 倍以上に急増している
状況を踏まえたものです。
 その他にも、中小企業の活性化に資する、事業承継や事業再構築などをテーマとした金融機関向けセミナーの開催、「国際金融都市 OSAKA 推進委員会」へのオブザーバー参加なども実施致しました。
 私ども大阪銀行協会は、地域社会と銀行界の接点として、社員銀行の皆様と力を合わせ、地元金融の円滑な運営と、顧客サービスの向上に資する活動を通じて地域経済の発展に引き続き貢献して参ります。
 皆様に於かれましては引き続きご指導・ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げますと共に、大阪銀行協会の活動により一層のご理解・ご支援を賜りますと幸いです。
 以上、簡単ではございますが、私からの挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。

以 上

≪質疑応答≫
(問)
 会長に 2 点、伺いたい。挨拶のなかにもあったが、ウクライナに関してSWIFT からロシアを排除する動きがある。これに対して日本の金融業界、もしくは日本経済全体に対する影響をどのように感じているか。
 もう 1 点目が、コロナの出口戦略というか、中小企業の再生に向けて全銀協としての事業再生ガイドラインの取りまとめや経営者保証に関するガイドラインに関して決定という話もある。今後の出口戦略、中小企業の事業再生に向けてどのようにお考えか。

(答)
 1 点目は SWIFT の施策についての影響と対応についてということだが、まずは、SWIFT の除外という方針についてしっかり金融機関として対応していく。その中では、今回、全ての金融機関を対象としているわけではないので、私どものお客様への対応という観点では、除外となっていない金融機関に対してはしっかり送金対応していくことだと思っている。悩ましいのは、今回、色々な制裁が出ているが、そのスクリーニングと送金内容を精査して、その上で送金という手続きになるため、お客様のご依頼に対して十分に応えきれないところも出てくる可能性がある。そうした状況について丁寧に説明しながら対応していくことが、我々金融機関に求められている対応なのではないかと思っている。
 もう一点、今日の午後に正式に公表されると聞いているが、事業再生ガイドライン等々、コロナの出口に向けた中小企業再生に対してどういうふうに受け止め、どういうふうに対応していくかという点について。中小企業の再生ガイドラインについては、昨年 6 月の成長戦略実行計画の中で策定を検討するということで、全銀協が中小企業の再生等に関する研究会の事務局として検討してきた。そのなかで中小企業再生に係る総合的な考え方や具体的な手続きを取りまとめてきた。
 大前提としては、足元で中小企業の皆様の債務が非常に増えているなかで、今後、事業再生、事業展開に際してそれがネックになっているようであれば、これは各会社、各企業様の実情をしっかり踏まえて、お客さまに寄り添いながら丁寧に対応していく。そのなかでは、迅速かつ円滑に対応していくことが求められると思うが、これは、今回事業再生のガイドラインが出た、出ないにかかわらず、我々としてしっかり取り組んでいるし、取り組んでいかなければいけないことだと思っている。
 今回、加えて事業再生のガイドラインが出されて、中小企業の皆様と私どもが、お互いの考え方をしっかり共有し、一定の基本的な考え方を共有することによって、従来以上に迅速かつ円滑な事業再生に結びつけられるということと、私的整理の選択肢が今回のガイドラインの中でまた増える形になったので、そうしたガイドラインをさらに活用することにより、中小企業の皆様が事業転換等に取り組むことについて、さらに後押しをしていくように取り組んでいくことが重要だと思っている。

(問)
 金融機関での両替や硬貨取扱いで手数料がかかるところが増えており、利用者にとっては負担が増えているという声もあると思う。もちろん世の中の流れというものがあると思うが、改めて銀行側としての見解をお聞きしたい。

(答)
 私どもが適用する手数料については、一般論としては、お客様が満足できる品質のサービスを提供することによって、そこにサービスに費やすコストや価値提供に見合う手数料を頂くというのが基本的な考え方だと思っている。そのうえで今回の両替の手数料について考えると、各会社が両替の実務において、これは現金を動かす輸送費とか包装にかかるコストがかかっているわけだが、そういうコストがかかるなかで、現在提供しているサービスの品質を維持するためにどのような取り組みをしていけばいいのかということを、最初に私が申し上げたような基本的な考え方、ポイントのなかで各社がそれぞれ対応しているというのが今の足元の状況だと思う。そのなかでは色々なサービスの体系とか数字の問題が出てくると思う。
 もちろん、私どもサービスを提供する事業者としては、お客様が質、量の面で満足できるように、また、多様なサービスのなかで別の選択肢を提示するとか、我々企業としての不断の努力を続けていかなければいけないことは大前提だと思うが、そういう形で、今の足元の環境のなかで各会社が、今回の両替サービスにおけるサービスを維持していくためにどういうふうに手数料体系、数字を考えればいいのかということを、まさに個社で考えているというのが足元の状況だと思っている。

(問)
 2 点伺う。1 点は、冒頭幹事社からあった SWIFT の件だが、会長から、悩ましいのはというところで、お客様の依頼に十分応えられていない部分があると言われた。これはもう少し、どういったことなのか。例えば、どうしても決済とか送金の手続きに時間がかかってしまっているということをイメージすればいいのか。実際、どんなことなのか。今、実際に影響が出ているのかという観点から教えてほしい。
 2 点目は、冒頭の挨拶の中で少しだけ触れられた国際金融都市のことだが、去年の会見のときに、オール関西で取り組む必要があるということ、東京との違い、金融商品であるとかマーケットの違い、この点を意識された方がいいのではないかという指摘があったと思うが、最初の 1 年、もうじき年度末に向けて戦略を取りまとめる段階だが、こういったものが進んでいると思われるか、その辺を教えて頂きたい。

(答)
 まずは SWIFT の件については、除外の方針が出たのはこの数日なので、現時点で大きな混乱が出ている状況ではない。ただ、一方で、各主要国、日本政府もそうだが、色々な経済制裁措置を講じている。まずは、送金する際にその制裁に当たっているのか、当たっていないのか、これを本当に丁寧にスクリーニングをしなきゃいけないということ。また、送金の内容も従来とは違うところに送金するとか、そういうことになるので、そこで従来以上に手続きや時間がかかってしまうというのが、私どもとして気にしているところである。この後、実際に様々なオペレーションをしていくなかで別の課題が出てくるかもしれないが、現時点で想定しているのは、そういう精細なスクリーニングをしっかりやり、内容もこれまで以上に精査していかなければいけないというなかで、従来より時間がかかることを非常に気にしている。一方で、送るロシアの方の状況もどう変わっていくか分からないところもあるので、そういう状況をしっかり情報収集しつつ対応していくというのが、今、私どもに足元で求められている状況だと思っている。
 もう一点の国際金融都市の件については、前回の記者会見のときにも申し上げたが、その後、秋口以降検討が続けられているなかで、基本的な考え方や今後の取り組み、スケジュールは徐々に整理されてきているのかなと思っている。前回にも少し申し上げた観点で言えば、大阪で国際金融都市ということであれば、東京とどういうふうに違いなり特徴を出していくかが個人的には重要だと思っている。そのなかでは、これは基本的な考え方が出ていると思うが、関西地域はまさにスタートアップのエコシステムが非常に進んでいるということを踏まえれば、そういうスタートアップを中心にした金融をどう考えていくのかとか、あとはレジリエンスの面でしっかりしたデュアルオペレーションができるということを一つの売りにしていくなど、私も今、幾つもアイデアがあるわけではないが、特に東京と比べて何を特徴にするかという観点を検討して頂いた方が、大阪が国際金融都市としての特徴を出せるのではないかと思っている。

(問)
 1 点目が、ウクライナ危機に伴って関西の企業への影響をどのように見ているか。個別の企業は難しいにしても、業種とか分野みたいなところでお示し頂ければと思う。
 2 点目は金融機関の融資についてだが、ウクライナ危機に伴って、一部の政府金融機関が融資を見直すことに言及されている。関西の金融機関でどのような融資の見直しが再考されるかも含めて教えて頂きたい。

(答)
 まず、今回のウクライナ危機の関西企業への影響という観点だが、今、現時点で、これは関西の企業に限らないと思うが、各会社、まさに現地の従業員の安全を最優先にしながら、今後のサプライチェーンを含めた状況についての検討を進めている段階だと思う。
 特に、関西の特定の企業を想定しているわけではないが、製造業だと、大きく 2 点あると思う。エネルギー価格の高騰が長期化するということと、もう一つはサプライチェーンの混乱で、例えばロシアやウクライナが非常に生産シェアの高い部材を使っている業種については、今後どのように調達を円滑にしていくのか、そういう形でのサプライチェーンへの影響が出てくる可能性が高いということだと思っている。
 エネルギー価格の高騰については、まさにコスト増になるので、コスト増が企業の収益にどう影響してくるかということと、各企業がコスト増をどう消費者に転嫁をしていくのかどうか。その結果として、景気全般にどう影響していくのかという辺りが、私は、今回のウクライナの危機が長期化してくるなかでは注視していかなければいけないポイントだと見ている。
 企業への対応という意味では、特に日本のお客様に対しては、大きく影響が出てくるのは、資金決済のところとサプライチェーンの問題とかエネルギー価格の問題で調達の必要性が想定されるので、それに対してしっかり我々銀行界として、万難を排して対応していくことが今求められているのかなと思っている。

(問)
 先ほどのウクライナ関連の企業への影響について追加で質問させて頂きたい。大阪と神戸の税関から、それぞれウクライナやロシアとの輸出入の関係を調べてみると、輸出で言えば中古自動車であるとか、ブルドーザーといった建設用機械が多い。輸入で言うと LNG とか木材とかアルミニウム、一部では原油などがある。そうすると、エネルギーとか自動車、カニも入っているので飲食業界もあると思うが、そういった関連の業界についての影響をそれぞれどのようにご覧になっているか。
 もう一点、少し趣旨は変わるが、大銀協の建物について、不動産という点でみると、建設から結構な年数がたっているかと思う。谷町四丁目の交差点という非常にいい立地にある中で、今後の不動産の活用のあり方についてどのようにお考えか伺いたい。

(答)
 各業界への影響ということは先程申し上げたとおりだが、製造業においては、エネルギー価格の高騰がどう具体的に影響してくるのかということが一番大きいと思う。今、これだけ高騰しているわけだが、これがさらに上がっていくのか、このまま高止まりしていくのかというなかで、調達手段の変更とかにも長期的には結びついていくと思う。まず足元、エネルギー価格の高騰が直接コストにつながってくるので、それに対してどう対応していくのかということが、一番大きなテーマかと思う。
 加えて、特にロシアやウクライナで生産シェアが高いものについては、これは、既にもう価格が上がっていると思うが、実際にそれを他の地域、例えばアフリカなどから調達することでボリューム面での確保ができるのかということ。これは価格の面、ボリュームの面で今後影響してくる可能性がある。それは比較的半導体の製造工程に多いと思うので、今でも半導体の需要に対して供給が追いついていないなかで、さらに半導体の製造が供給サイドに大きな影響を与えてしまうのかということについては、注視していく必要があると思っている。
 もう一点、建物については、触れていただいたように、この建物は既に建ててから 50 年以上たっている。そうはいっても毎年管理、維持を色々やってきたわけだが、確かに老朽化しているところは事実である。加えて、足元、手形交換所が電子交換所に変わっていく中で、今、手形交換をしている場所については不要になるので遊休スペースになる。そういうことを踏まえて、今、この土地・建物についてどういう活用方法があるのかということについては検討しているところである。これは具体的な内容が固まり次第、公表させて頂ければと思っている。

(問)
 短く 2 問お願いしたい。一つは、先ほどからお話になっているウクライナ情勢でエネルギー価格が高騰している。それの影響が深刻になりかねないということだが、見方を変えると、これを機に脱炭素といった流れが、コスト削減の観点からも進むのかと思うが、この辺り、金融機関としてどういうふうに取り組んでいくか、お考えを聞かせてほしい。
 もう一点が、中小企業の関連になるが、ゼロゼロ融資が来年度から、3 年間の据え置きが終わって返済が本格化すると言われている。大阪は、プロパー融資のない、ゼロゼロ融資だけを借りている中小企業が結構多いと言われており、そこに対して金融機関の支援の手が届きにくくなるのではないか、優先順位が低くなるのではないかという指摘もあるが、その辺りの支援についてどのように考えているか。

(答)
 今回のエネルギー価格の高騰も踏まえて、脱炭素の取り組みをどうしていくかは非常に重要なテーマだと思う。このウクライナの状況がなくても、脱炭素に向けた動きはスピード感を持って対応しないといけないことなので、方向感としては、今回のウクライナの状況も踏まえ、脱炭素に向けた動きが加速化していくものと思っているし、私ども銀行界としても、そうした動きを資金面等でしっかりと後押ししていく必要があると思っている。
 後者のゼロゼロ融資における中小企業の支援というところだが、これはまさに、今、私どもがコロナ禍において、今後出口に向かうなかで銀行界として支援していくことが最も重要なテーマだと思っているので、ご懸念の点についても、私ども銀行界としてしっかり取り組んでいかなければいけないテーマだと思っている。

以 上