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会長会見・挨拶

半沢会長 記者会見(関西金融記者倶楽部との懇談会)

 2025年3 月
一般社団法人 大阪銀行協会

大阪銀行協会 半沢会長記者会見
​(関西金融記者倶楽部との懇談会)

日 時 : 2025年3 月10日(月)11:15~11:45
       場 所 : 大阪銀行協会 (ダイビル本館16階)        


≪会長冒頭挨拶≫
 大阪銀行協会の半沢でございます。皆様には、日頃より当協会の活動にご理解・ご支援を賜り、誠にありがとうございます。大阪銀行協会・会長としての任期も残すところ約3ヵ月となりましたので、本日、皆様との懇談の場を持たせて頂きました。
 はじめに、私から、足許の経済情勢や当協会の活動についてお話しさせて頂きます。その後、皆様よりご質問を頂戴できればと存じます。

 まずは、経済情勢です。世界経済は、インフレ鎮静化と所得改善の流れを維持し、金融緩和の継続も支えに巡航速度の成長軌道へ向かっております。今後も、各国の労働市場が底堅さを維持していることや、欧米を中心とする中央銀行が慎重に金融緩和を進めるとみられることなどから、景気は緩やかな成長ペースを維持すると考えております。ただし、世界経済を取り巻く環境の不確実性は高く、米国新政権の動向や中東等の地政学情勢などが、金融市場や経済の振れ幅を高めるリスクには引き続き注意が必要です。
 わが国に目を転じますと、総じて堅調に推移する企業業績や設備投資意欲を背景として、昨今の高い水準の賃上げ機運は今年も定着する兆しを見せており、「成長と分配の好循環」に向けて、さらに前進していくとともに、これを受けた「金利のある世界」への歩みも着実に進んでいくものと思われます。
 関西経済につきましては、わが国の中でもインバウンド需要が大きく、その好調な推移が景気を力強く支えています。当地域の輸出のウエイトの大きさと合わせ、海外景気が想定以上に減速した場合の下押し影響には注意が必要ですが、基本的には日本経済と同様に緩やかな景気回復基調が続くものと考えております。
 さらには、いよいよ開幕を間近に控えた「大阪・関西万博」も、これまでパビリオンや会場の整備における投資の拡大が景気の押し上げ要因となってきました。中長期的にも、万博を契機として進む様々な社会インフラ整備やインバウンドのさらなる拡大を通じて、関西経済の持続的な発展へ繋がることが期待されます。
 そして、世界中からの来場者が関西や日本各地を周遊し、その土地の伝統や文化に触れ、その素晴らしさを自国に持ち帰って頂くことを通じて、関西および日本のファンを増やすチャンスであり、日本経済の持続的な発展へ繋がるものと期待しております。

 続きまして、今年度、当協会として取り組んできた主な活動として、金融犯罪被害防止への取組みと金融経済に関する普及・啓蒙活動についてご説明申し上げます。
 昨今、深刻な状況が続いている特殊詐欺被害の対策強化に向け、地域行政の条例改正に関する審議会に当地の金融業界を代表して参加し、実効性のある対策となるよう積極的に意見発信致しました。
 金融経済に関する普及・啓蒙活動については、昨年のJ-FLEC(金融経済教育推進機構)発足を受け、同機構の活動に協力しつつ金融防犯や業界広報をテーマとした当協会独自の出張講座を積極的に展開するとともに、金融経済と密接に関係する「脱炭素化」や「関西経済の展望」などをテーマに、有識者を交えたシンポジウムの開催にも取り組みました。
 当協会としましては、引き続き、地域社会と銀行界を「つなぐ」存在となり、社員銀行の皆様と力を合わせ、地元金融の円滑な運営と顧客サービスの向上に資する活動を通じて、微力ながら地域経済の発展に、お役に立ちたいと考えております。

 最後になりますが、関西金融記者倶楽部の皆様方には、今後とも宜しくご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げますとともに、大阪銀行協会の活動により一層のご理解・ご支援を賜れますと幸いです。
 以上、簡単ではございますが、私からの挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。


≪質疑応答≫
(問)
 質問は2つ。1点目は、もう少し任期はあるが、この任期を振り返って印象深い出来事などがあれば。また、冒頭のコメントとも重なる部分があって恐縮だが、足許の関西経済の見通し、展望を含めて聞かせて頂きたい。
 2点目が、金融機関の貸金庫業務に関して、昨年来、様々な事案が発生しており、当局も今年度内に貸金庫業務の監督指針、いわゆるガイドラインを策定する方針である。これまでの課題、今後の対応策等について聞かせて頂ければ幸いである。

(答)
 まずは、大銀協会長としてここまで務めてきた印象ということで、私ども銀行界は、もともとDX、GXという構造変化の中にあり、それに加えてこの1年弱、政策金利の2回の引上げや、内外の政治イベントが相次ぐなか、私どもを取り巻く環境変化の大きさと速さを実感しているなかでの会長業務だったと思っている。そういう大きな環境変化のなかにおいても、私どもがしっかり、優先して取り組まなければいけないものは、先ほども少し触れさせて頂いたが、地元金融の円滑な運営と顧客サービスの向上等を通じて、地域経済と金融界を繫ぐ存在であるという使命を社員銀行の皆様としっかり果たしていくことだと思っている。具体的に、まさに特殊詐欺対策とか、大阪・関西万博の機運の盛り上げ等に取り組んでいるなかでは、個別行の取組みだけでは十分でないものを、業界全体として取り組んでいく。さらには、民間だけではなかなか十分できないものを官と一緒になってやっていくことの重要性を改めて実感しているというのが、今の私の気持ちである。今後も、引き続いて地域経済と金融を繫ぐ使命をしっかり果たすために、これは社員銀行の皆様とは当然だが、官とも一体となって引き続き取り組んで参りたいという思いである。
 もう1点が貸金庫の件だが、冒頭、個別行として一言お詫びを申し上げないといけないと思っているのは、まさに当行の貸金庫からお客さまの資産を窃取したという事案について、お客さまをはじめ関係の皆様に多大なるご心配、ご迷惑をおかけしたことを改めてお詫びを申し上げる。貸金庫業務は、銀行に対する信頼・信用を前提としたビジネスであり、銀行としてもお客さまからの大切な資産をお預かりしている重要な業務だと認識している。
 そういうなかで、まず業界としては、昨年12月に全銀協から通達を出し、先月には、これも全銀協から展開をしているが、まさに貸金庫業務の取組みに対する様々な事例集を共有した。そうしたものを踏まえて、管理体制の強化に各銀行は取り組んでいると思っている。また、先ほど話があったが、当局、金融庁においても、貸金庫における窃取事案を踏まえて、ガイダンスというか、方針等の検討をしていると承知しているところである。今後、業界としても、私どもの問題意識に加え、金融庁から方針が示された場合には、そうしたものも踏まえ、業界としてどのように適切に対応していくかということの検討をしっかりしていきたいと思っている。また、個別行としても、今、しっかり取り組んでいるところだが、私どもの傾向としては、長期的にみると貸金庫の利用者は下降トレンドにあるわけだが、足許、災害対応や安心・安全対応のために重要な書類、貴重品を貸金庫に預けたいというお客さまの声も相応に寄せられている状況である。そうしたお客さまのニーズ、一方で管理強化をするので、そうしたコストを踏まえた事業採算、さらには、私どもがお預かりした保管物の内容を確認することが難しいという、まさに貸金庫業務の固有リスク、そして、各銀行においては、例えばショッピングモールに出店するといった店舗戦略の変化など、様々な観点を踏まえて、今後、貸金庫業務をどうしていくかということを幾つかのオプションの中で検討しているところである。今後、金融庁からも出てくるであろう方針等も踏まえて、しっかりと今後の方向性については検討を重ねていきたいと思っている。

(問)
 今、貸金庫の関係の質問も出たが、この1年はもうひとつ残念な話があり、これも貴行グループの話だが、銀行と証券の2社が顧客企業の情報を違法に共有した問題も発覚した。私どもとして気になるのは、こういう大きな不祥事事案が1年のうちに2つ出てきた。さらに、貸金庫の問題に関しては、ご案内のとおりみずほでも発覚をしており、これだけ大きな問題が2つ、3つと出てきているところで、何かこういうことが起きてしまう素地、背景のようなものが業界の中にあったりしないのか。この辺りをどういうふうに整理をしているのか、考えを聞かせて頂きたい。

(答)
 1年間で2回、こういうことを当行としては発生させてしまったということのなかで、そのようなご指摘を受けることを本当に重く受け止めなければいけないと思っている。振り返ってみると、再発防止にも繋がってくるわけだが、いろいろな業務戦略を打つに際して、法令遵守等の意識を浸透させるという守りの部分、ここをしっかり取り組んでいかなければいけない、これは間違いないと思っている。それも法令、ルールだけではなく、正しく行動するという倫理観等も踏まえて、もう一度、行員の教育、これは銀行に入行するときから毎年繰り返してやっていくことだと思っているが、もう一度正しく行動するというところに立ち返って、私どもの業務を強化するというか、基盤をもう一度作り上げ、皆様にもう一度信頼してもらえるように取り組んでいくということに尽きるのではないかと思っている。

(問)
 先ほどの貸金庫の話だが、足許で、幾つかの銀行では既に貸金庫の新規受付を停止しており、今後ビジネスの縮小ということも考えられる。会長も先ほど、今後、利用者は長期的には下降していくと言われていたが、貸金庫ビジネスは、業界全体で今後どういうふうに変わっていくか、そもそもどうあるべきか、その点のお考えをお願いしたい。

(答)
 全体の数字を承知しているわけではないが、貸金庫については、まず大前提として、お客さまの資産をお預かりするという業務自体は重要であるということは、業界全体の話だと思っている。そのうえで足許の状況を踏まえると、トレンドとして、先ほど申し上げたように減少トレンドにあるというのは共通しているのではないかと思うが、一方で、繰り返しになって申し訳ないが、災害や昨今の強盗等の事件を踏まえると、やはり安心・安全に預けたいというお客さまのニーズがあることも間違いないのではいかと思っている。それに対してどういうふうに私どものビジネスモデルを構築していくかということに際して、これまで以上の管理体制を構築しなければいけないと思っている。それには、予備鍵、副鍵をしっかり管理する、私どもでは本部に集中したわけだが、そういうことに加えて、あとは貸金庫での様々な動きについて、AIを活用して、モニタリングのレベルを上げるとか、そういうことにも取り組んでいく必要があると思っている。そうした結果として、事業採算がどうなっていくのかということ等も踏まえて、これは各銀行において、貸金庫業務についてどのように継続していくのかということをまさに今検討している最中ではないかと思う。
 そういう選択肢の中では、新規の業務をやめるという銀行も出てくる。いずれにしても、複数の観点を踏まえて、今後のビジネスをどうしていくかを検討している最中だと思うので、そういう幾つかの観点での検討を踏まえたうえでの方向性を皆様にご説明していく方向になっていくのかと思っている。個別行としては、そんなに遠くないタイミングで、何らかの方向性を示したいと思っている。

(問)
 万博に関してだが、先ほど日本経済の持続的発展に繋がることを期待すると言われていたが、具体的にどういったことを期待されているのか。特に、金融機関としてどういったところが期待できるか、その辺をお願いしたい。

(答)
 ひとつは、経済的に言えば、何といっても、関西地域において、これまでもいろいろな投資をしてきたという経済的な側面と、この後の消費の盛り上がりといったこと。また、これまでもいろいろな社会インフラも整備してきたので、それが今後の持続的な成長に繋がっていくことは間違いないと考えている。あとは、私は70年の万博はまだ5歳だったので訪問できていないが、あのときの自分の幼いイメージなので違うかもしれないが、やはり太陽の塔などなど、本当にハード面での印象が強い。今回の万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」ということを謳い、SDGsの実現も求めるということを謳っているので、もちろんハード面でのいろいろな訴求もあると思うが、社会課題とか環境課題への対策や仕組みといったソフト面での今後への貢献というのも、私はあるのかなと。まだ開催前なので今の印象だが、そのように現時点では思っている。

(問)
 貸金庫について伺う。お客さまのニーズがあるということを説明頂いたと思うが、銀行として、この業務に取り組む意義はどういうところにあるとお考えか。

(答)
 何度も繰り返して恐縮だが、預金をはじめ、お客さまの大切な金融資産をお預かりしているというのが、私どもの本業中の本業だと思う。同じように今回の貸金庫については、重要な書類とか貴重品、まさにお客さまの大切な資産をお預かりさせて頂いている。そういうことをさせて頂いている大きな背景としては、私ども銀行に対する信頼・信用を頂いているということが大前提だと思う。そういう信頼・信用を頂いているということを前提としたビジネスとして、貸金庫の業務も銀行業としての位置付けであると自分としては理解している。

(問)
 足許のマーケットの動きについて所感を頂きたい。長期金利が1.4%、1.5%、その辺りでうろうろしていて、円相場も1ドル147、8円位で推移している。こういったマーケットの円相場、金利の情勢についてどう感じているか。例えば、協会の加盟行の業績に与える影響であるとか、地域経済に与える影響をどのように考えているか。もう少し大きい話で言うと、世界経済、アメリカ経済も減速懸念みたいなものが出ていて、関税政策等も踏まえて結構混沌としてきていると思う。その辺りの米国経済を中心とした世界経済の先行きに対して、どのような所感を持たれているか。

(答)
 まず、金利について言えば、足許の長期金利の動きは、マーケットとして、日銀のまさに今利上げをしている到達点の意識が高まってきたので、従来よりも、もう少し水準が上のところまで行くのではないかと思われていることを反映しているのかと思っているが、どうしてマーケットがそう思っているのかということは、おそらく2つであろうか。やはりインフレが再加速するのではないかということ、もうひとつは、先日発表された10-12月のGDPが堅調に推移したということを踏まえて、マーケット全体での金利の水準が当初より上に行くだろうとみているということなのかと思っている。
 それがどう影響してくるかというと、プラス・マイナス両方あると思っている。銀行界にとって言えば、これは両方あると思うが、今保有している国債等の資産については、含み損は拡大する可能性がある。一方で、資金収益の面では利幅の拡大ということで収益が拡大する可能性があるということだと思う。個人のお客さまでみると、一番典型的にいわれるのは住宅ローンだと思うが、住宅ローンはこれまで超低金利が続いてきているなかで、借りている方の8割が変動金利だと思う。そうした変動金利の借入れが多いことを考えると、金利が上がるということは一定程度の負担が増える可能性がある。ただ、住宅ローンについては様々な激変緩和措置もある。具体的に言えば、金利が上がってからも実際に適用になるまで5~6カ月かかるし、また、金利が実際に上がっても、ほとんどの金融機関の商品は、5年間は返済額を変えない。また、返済額を見直したタイミングでも125%までしか引き上げないという激変緩和措置があるので、足許だけをみれば大きな影響が出ている状況ではないと思っている。
 為替については、今は150円を切る水準になっているとはいえ、足許の水準をみれば、歴史的な円安水準にあると言えるのではないかと思う。これは、ロシア・ウクライナ戦争が勃発して以降、インフレがグローバルに加速するなかで、欧米において金利を急速に引き上げた。一方で日本においても、マイナス金利が解除され、漸進的に金利を引き上げているが、やはり内外金利差が拡大している。これを背景に円安になっていることは言えると思う。また、少し長期でみれば、日本の国際競争力が少し落ちているのではないのか、それを円安の理由としてみている考え方もあると思う。
 今後について言えば、為替はなかなかいろいろな要因があるので、これも不確実性が伴うことは理解して頂ければと思うが、長期的にみた国際競争力は、大きな動きにはなりにくいのではないかと思う一方で、金利について言えば、日本は日銀が言っているとおり、経済・物価上昇の実現に応じて今後も金利の引上げを継続していくと言われている一方、欧米については、どちらかというと金利引下げのタイミングを模索しているということだと思うので、内外金利差は縮小方向だと思う。今後の方向性としては、円高方向になる可能性が高いかなとみているが、そういうなかで、為替の影響は業界によってプラス・マイナスがあるので、産業界でいえば輸出競争力が高まるし、円換算したときの収益が増えるということがある一方で、やはり海外からの輸入の調達費用のコストが上がっているということがあるので、なかなかプラス・マイナスどちらかということは言いにくい状況かと思う。
 ただ、ひとつ言えるのは、急激に動くと、それに対する対応というのはどの業界も大変だと思うので、急速な動きに対しては注視していく必要があるかと思っている。

以 上

(会見の様子)
(発言する半沢会長)