大阪銀行協会フロントページへ

会長会見・挨拶

「植田和男 日本銀行総裁との懇談会(4団体共催懇談会)」 における鵜川会長挨拶

 9月25日、当協会は、関西経済連合会、大阪商工会議所、関西経済同友会の3団体とともに、毎年恒例の標記懇談会を開催(会場:リーガロイヤルホテル)しました。
 当協会からは、鵜川 淳会長(池田泉州銀行頭取)が出席し、主催者団体の代表として、下記のとおり述べましたので、お知らせします。


 大阪銀行協会の鵜川でございます。
 植田総裁におかれましては、大変ご多用の中、関西経済界との懇談会の機会を頂戴し、心より感謝申し上げます。また、大阪支店長の中島理事をはじめ日本銀行の皆様には日頃より経済の発展、金融システムの安定化にご尽力を頂いており、改めて御礼申し上げます。大阪銀行協会を代表して当懇談会でお話をさせて頂くのは2019年以来2回目です。前回申し上げたことに触れながら、2点お話をさせて頂きます。

 まず、4年前には、「当協会が運営する『大阪手形交換所』が1879年(明治12年)に設立された日本初の手形交換所であり、現在、手形・小切手や交換制度自体も電子化の流れの中にはありますが、この140年の歴史に矜持を持って協会運営をして参りたい」と申し上げました。
 その直後、2020年初頭から始まったコロナ感染症の長期的かつ世界中での蔓延が経済社会における足元の課題を大きく変容させました。
 その中にあって、行政の様々な対策や日本銀行の諸施策が迅速かつ手厚く実施され金融機関の事業者支援をしっかりお支え頂いたことから、コロナ禍においても金融環境は安定して推移しました。
 そして、本年5月8日にCOVID19が2類相当から5類に変更され、経済社会活動が正常化しつつある今日ではありますが、「労働人口の減少」といったような、本来は4年前からあった重要な課題を起因として一気に様々な問題が噴出してきたような印象です。
 昨年来の内外金利差の拡大と円安、加えて世界的な労働力不足による資源高・物価高といった状況の中で、大きなメリットを享受して人材投資にも積極的に対応している事業者がある一方で、中小企業を中心に価格転嫁が難航して収益を圧迫され、その結果として人手の確保にも窮する事業者が見受けられます。また、資産価格の高騰では海外勢力には割安感から積極的に買われている一方、国内個人の資産取得のハードルが上っています。
 パンデミックの正常化プロセスの中で顕在化してきた労働力不足や物価高に起因する格差拡大といった副作用に対する対策が重要です。「労働力不足」、「物価高」自体を緩和していく為の処方箋と合わせて日本銀行のお考えをご教示頂きたいと思います。

 次に金融政策についてです。4年前、私は「マイナス金利政策の長期化によって金融機関の資産運用力や収益力が大幅に低下し、結果として商品・サービスの維持・向上に向けた投資余力が低下しかねないこと、その中で、各金融機関は何とか一定の利益を確保する為に配置店舗数の縮小や経費の圧縮等に取組む等民間企業としての経営努力を続けています。しかし、それが地域経済社会全体にもたらす影響については日本銀行においても、より関心を持って見て頂きたい」といったことを申し上げました。
 そして、先程申し上げた「昨年来の内外金利差の拡大と円安」、「労働力不足等を起因とする資源高・物価高」といったコロナ後の激しい変化の中で、改めてお伺い致します。日本銀行におかれては、考慮すべき多くの要因を踏まえながらの金融政策のハンドリングの難度は私どもの想像を超えるものですが、様々なデータに基づいてなされる政策判断において植田総裁が特に重視されているポイントについてご教示頂ければ幸いです。私どもは今後それを一定の連続性を持ってフォローしてまいります。
 例えば、コアCPIの前年比実績は8月では+3.1%で、12か月連続3%以上で推移しています。一方で7月の展望レポートでは24年度、25年度とも+1%台での推移を予想されておられます。実績の積み上がりとコンサバティブな予想とのギャップを繋ぐものは「実績の要因分析」に他なりませんが、そこを私達の経営判断においても重視していかなければなりません。

 そう申し上げますのも、金融機関を取り巻く環境は、足元の様々なコストアップに対しては価格転嫁できるものが殆どないという点で、これがコロナ対策後の収益圧迫要因となっています。
 YCC運用の柔軟化対応による長期金利の上昇は、証券運用にとっては保有証券の評価損という痛みを伴います。これをカバーするのは新規購入債券の金利収入だけでなく、貸出債権の金利収入の基準となる短期金利におけるマイナス金利政策の見直しというバランスのとれた金利体系に他なりません。
 しかし、業界都合のお願いばかりをしていても社会課題は解決しません。金融機関はお客様のニーズや課題のソリューションをお届けするという役割を果たしていると各方面の皆様方からご評価頂ける限り、体質強化やスリム化の諸施策を図って参ります。
 また、金利環境の改善を願うだけでなく、金利の上昇した場合の副作用については私達自身が最もセンシティブでなければなりませんし、他国での状況も注視しておく必要があると考えております。

 以上大きくは2点申し上げました。
 日本銀行におかれましては、金融機関が直面している様々な課題を克服するための経営戦略にもご理解を賜り、引き続きバランスの取れた金融政策と運営を以って私共をお導き頂きますよう宜しくお願いします。
 有難うございました。

以 上

〔本件に関する照会先〕
大阪銀行協会・調査部  電話06-6867-9133