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会長会見・挨拶

鵜川会長 就任記者会見

2023年 6 月
一般社団法人 大阪銀行協会

大阪銀行協会 鵜川会長就任記者会見

日 時 : 2023年6 月9日(金)13:30~13:55
         場 所 : 大阪銀行協会 (ダイビル本館16階)        

≪会長より冒頭挨拶≫
 ただいま、ご紹介にあずかりました、池田泉州銀行の鵜川でございます。
 この度、大阪銀行協会の会長を仰せつかりました。これから1年間、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は就任会見ということでございますが、私自身としては4年ぶり2度目の会見でございます。
 2019年の就任会見では、リスクファクターとして、米中経済摩擦、Brexit、中国経済減速と関西経済への影響などについてコメントをしておりました。
 その半年後からCOVID-19が世界に拡散し始め、感染爆発を伴って世界の景色や経済・金融の情勢は一変しました。
 2020年3月の会見の中では、“緩やかな拡大基調だったが、深い霧の中に入った”という表現をしました。
 今日COVID-19は5類に変更され、関西もインバウンド需要が急回復してきました。
 ようやく霧が晴れたかのようでございますが、よく見渡してみると、皆に等しく3年の月日が経過したことが分かります。
 そして、厳しい労働力不足にも直面しています。
 コロナの3年間、行政の手厚いサポートの下で表面化しなかった高齢化・少子化の着実な進行が、経済活動の正常化プロセスにおいて、一気に出てきた形であります。
 加えて、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻に端を発し、世界経済は更に大きな変化に見舞われることになりました。
 また、需要の回復と労働需給の引き締まりを背景に世界的に物価が上昇し、米国をはじめ欧州各国が大幅かつ急激な金融引き締め政策を行った結果、米国の銀行破綻やクレディスイス問題などが起こりました。
 欧米では、金融システムの安定に対する不安が高まることとなりました。
 このような中でも、足許の経済動向を見ますと、米国経済は、労働市場は底堅く、賃金インフレによる消費も堅調であることから、急激に減速はしないものと見られております。
 一方、中国は、国内サービス部門が好調であるものの、輸出が弱含みとなりつつあることから、少し警戒感をもって見る必要が出てきております。
 そして、わが国経済は、賃上げに加えて経済活動の正常化やインバウンドの回復により、回復を続けていくことが見込まれているところであります。
 しかし、中小企業の中には、原油高・資源高・原材料高・人件費高騰などのコストアップ要因を価格転嫁できず、事業収益を圧迫される状況もあり、注意が必要です。
 多くの中小企業が賃上げを実施しているのも、まずは人材の流出を食い止めるため、という側面のあることを見逃してはなりません。

 さて、大阪では、いよいよ2年後に迫った「大阪・関西万博」や、先日「区画整備計画」が国交省の認定を受けた「大阪IR」など、大きなイベントが予定されており、銀行業界としてもこの大きな動きに対して、サポートや参画をし、関西経済の押し上げに貢献して参りたいと考えております。

 次に、当協会の活動についてご説明をいたします。
 皆さまご存じの通り、昨年11月、143年にわたり地域の決済インフラを担ってきた大阪手形交換所の業務を終了いたしました。
 また、それに伴い、当協会事務所も3月に当所へ移転をいたしました。
 手形交換業務は終了いたしましたが、今後も関係官庁や産業界・金融機関と連携し、地域社会・地域経済活性化に貢献できるよう努めて参ります。
 特殊詐欺などの金融犯罪からの利用者保護や反社会的勢力との関係遮断につきましては、「大阪府金融機関防犯対策協議会」や「大阪府金融機関警察連絡協議会」の活動を通じまして、大阪府や大阪府警察との関係強化を図って参ります。
 振込め詐欺等の特殊詐欺は、引続き関西でも大きな社会問題となっております。その撲滅に全力で協力していく所存であります。

 最後になりますが、関西金融記者倶楽部の皆さまには、今後ともよろしくご指導・ご鞭撻を賜りますようお願いを申し上げまして、私の就任の挨拶とさせていただきます。

以 上

≪質疑応答≫
(問)
 1点目は、足許の関西経済の状況、動向についてどう評価されているかを伺いたい。
 もう1点は、本年度からいわゆるゼロゼロ融資の返済が本格化している。管内の地域金融機関においての返済状況や中小企業に対する
変更等の現状について教えて頂きたい。

(答)
 1点目、関西経済の状況についてどのような認識かという質問だが、まず一般的には、大企業については、円安等による価格の上昇はプラス効果に働いており、その利益が設備や人材投資に回る好循環になっていると思う。
 その一方で、中小企業については、大企業と同じ流れに乗れている先と、価格転嫁が進まず収益が圧迫されている先に分かれている状況かと思う。
 個人消費については回復基調にあるという認識である。
 賃上げ部分が物価上昇をどれだけカバーできているかという問題はあるにせよ、コロナ3年間での一定程度の蓄えもあり、コロナが正常化していく流れのなかで個人消費は一定程度堅調に推移しているとみている。
 冒頭申し上げたように、好調な企業と、そうではない、賃上げについても人材の確保を優先的に捉えてやっている企業もあるので、そこは我々も注意をしながら見ていく必要があると思っている。
 ゼロゼロ融資については、今年度から据え置き期間が終了して、返済が始まるケースが増えてくる。
 既に返済を開始している事業者もあるが、そのなかから1割程度は、元々の融資条件を一定程度変更しないと資金繰りが厳しくなるケースが出てくると認識している。
 その点から言うと、今年度に入って多くの事業者で返済が始まるなかで、一定程度そういう事業者が出てくると予想している。
 そういった事業者が、今後どういう形で事業を行っていくのか、我々としては事業者に寄り添いながら、しっかりそれぞれの状況をお聞きし、ご相談に乗っていくというスタンスで、色々な対応を考えていく必要があると思っている。
 金利については、国内金利は年初、上がっていくのではないかという見通しもあったが、色々な指標、あるいは昨今の動きを見ると、急に大きな金利の変更はないとの傾向が、今の指標から見えてきている状況である。
 事業者にとっては、調達コストが急に、かつ大幅に上がっていくことはないのではないかと思っている。
 コロナ禍から正常化していくなかで、いかにそれぞれの企業が事業のメリハリをつけ、経営手腕を発揮していくか、その動向に注目し、サポートができる提案をしていきたいと思っている。

(問)
 先程の挨拶の中にもあったが、手形交換業務がなくなり、今後どうしていくかというところで、金融犯罪防止の話が出ていたが、他に大阪の経済に対しての協会側の働き掛けとか、力を入れていきたい活動、取組があれば教えていただきたい。

(答)
 協会の目的である事業内容として、大きな部分を申し上げると、「銀行とりひき相談所」を以前から開設している。
 預金者の保護、取引先の保護を目的に色々な相談を受けながら、金融機関とお客様の間に入って、色々な課題解決のお役に立っていく。これは大きな活動であると思う。
 もう1つは、金融・経済に関わるところの調査・研究、あるいは最近新しい資本主義のなかで言われている金融教育、こういったことも銀行協会が力を入れてやっていける部分だと思っている。
 これは調査・研究という協会の本来の目的のなかでなすべきこととしても、力を入れていきたいと思っている。
 地元の大学の研究者の皆さん方と連携しながら研究を進めていくとともに、金融教育についても力を入れていきたいと思っている。
 それから、今仰って頂いた金融犯罪防止については、行政・警察とも連携して取組んでいく。
 今は特殊詐欺の例が多く、これからも色々形を変えた特殊詐欺が出てくることが予想されるので、新しい傾向をしっかり確認しながら、金融機関と一緒になってその対策を図って参りたい。
 手形交換所については、手形そのものが減っていく流れのなかで、全国的にそういう形になっているが、銀行協会本来の目的を再認識し、今申し上げたようなことをしっかりやっていきたいと思っている。

(問)
 先程の挨拶で、関西万博、IRというキーワードが出てきたが、関西経済にとって大きなインパクトのある事業になると思う。
 それに向けて協会としての役割、やっていきたいことがあれば教えて頂きたい。

(答)
 銀行協会そのものが主体的に参加するということは、あまりない。
 大阪・関西万博や国際金融都市OSAKAについてもオブザーバー的に参加することとなる。
 大阪の活性化の動きについて、各金融機関が取り組んでいくものを側面支援していくことに銀行協会としては力を発揮していきたいと思うし、情報提供もしっかりやっていきたいと思っている。

(問)
 先程、ゼロゼロ融資のところの質問で1割という数字があったと思うが、これは池田泉州銀行の調べの中での1割かということと、どういう背景があって条件変更をされているお客様が多いのかを教えて頂きたい。

(答)
 1割と申し上げたのは、大阪銀行協会が把握している数字ではなく、池田泉州銀行におけるゼロゼロ融資の据え置き期限が到来しているお客様のなかで、当初の融資条件ではない形での対応が必要だと話をさせて頂いているところが約1割程度であるということである。

(問)
 そのお客様達は、返済が厳しいから期間を延ばしたいという要望が多いのか。

(答)
 本来、コロナ対策として提供している資金なので、その資金を通じて厳しい環境のなかでどう事業を建て直すかが、それぞれの事業者の課題になってくる。
 その厳しさの状況など、色々な要因があり、据え置き期間中に事業の建て直しが十分にできておらず、もう少し期間が必要だという場合など、条件を変えていく必要があるという判断をしている。

(問)
 万博のことで先程言及を頂いたが、関西経済にとってどういった良い影響があると見ているか。
 また、今、整備費が上振れるのではないかとか色々課題が指摘されているなかで、一般論のレベルでよいのでどう見ているかを伺いたい。

(答)
 大阪・関西万博については、半年の限定期間であるので、関西経済に与える影響というのは、その半年間のなかで…というよりもそのレガシーをどう残していくのかという点が、大きいかと思う。
 そういう意味においては、この万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」に向けて、当行の場合で申し上げると、ヘルスケアパビリオンに大阪・関西万博のテーマに資する中小企業、あるいはスタートアップ企業にご参加頂く機会を提供していく。
 そういった動きを通じて、大阪の中小企業、スタートアップ企業の裾野を高い目線で広げていくことで、それが先々の関西の経済の活性化にも繋がっていくのではないかと思う。
 会場建設等については、今の資源高のなかで予算がどうなっているのかという問題は出てきていると思うが、具体的にどうしていくかは、どの程度のコストアップになるのか等の情報が共有され、残り2年という期限があるなかで答えを出していくということだと思う。それは地元の皆様のなかで議論していくことだと思う。

(問)
 銀行の系列証券会社のなかで仕組み債の販売等、投資経験のあまりない方に対して販売していたという問題が出ているが、それに対して鵜川会長の受け止めを聞かせて頂きたい。

(答)
 本日の日経新聞の記事についての話かと思うが、リスク性商品の購入経験の浅い方に複雑な商品を十分説明しないまま提供する、いわゆる適合性の原則にもとるケースだという報道があった。
 その報道が正しいのであれば、個別のケース、色々なケースがある中で、適合性の可否の確認のところに問題のある事例があったのではないかと思う。
 仕組み債というのは複雑な商品性を持っているので、管理当局目線においても一般の個人の方に販売する場合の説明の十分性であるとか、あるいは説明する銀行側の体制などがしっかり確立しているのかが吟味されているのは周知のところである。
 各金融機関においては、説明の十分性の確保などしっかりした体制が整うまでは、仕組み債については販売を自粛している状況と認識している。
 銀行協会としては、先程申し上げたような「銀行とりひき相談所」を通じて、お客様の保護を行っていく。
 また、銀行に身を置く者としては、お客さまに十分な説明ができる体制をしっかり整えたうえで、仕組み債のほか、複雑な商品性を持ったものについて販売を再開していく、そういう姿が望ましいと思っている。

以 上